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2012年11月08日

鉄分を摂取する旅ー③最終回

無人駅というのはこの駅を見た人が発想した
言葉ではないか、と思うくらい誰もいない。
駅員は当たり前だが客すらいないのだから、
これでやっていけるのか?と客ながら経営状況を
心配してしまうくらいだ。

さらに無人駅の周りには民家もない。
バスが1時間に1回来るか来ないか、である。
やはり経営のことを気にしてしまう。

そんなことを考えながら
あたりをきょろきょろしていると
「クマに注意!!」という字が目に飛び込んできた。
こんなところでクマに襲われたら
間違いなく、わが身はこの地の土となり草になってしまう。

そんな状況の中、風で揺れる木の音に
怯えながら待つこと数世紀、
トンネルの向こうからようやく電車がやってきた。
鉄分を摂取する旅ー③最終回
おっと、言い忘れていたが私は今、大井川鐵道井川線通称南アルプスあぷとラインの某駅にいるのだ。

この井川線では奥大井の大自然あふれる渓谷を堪能するのは
もちろんだが、井川線の醍醐味である
日本で唯一のアプト式鉄道に乗り
日本一の急勾配を登ろうと目論んでいるところなのだ。

さらに私の目論みは鉄道だけではない。
行列ができると困るので大きな声では言えないが
山奥には「美女づくりの湯」と呼ばれている寸又峡温泉があるのだ。知ったからには足を伸ばさずにはいられまい。


鉄分を摂取する旅ー③最終回
私のほかに乗客は数人しかおらず、
その数人すべてが首から一眼レフカメラをぶら下げている。
いわゆる、「鉄道オタク」だらけの車内なのだ。

しかし、なぜ鉄道オタクは男2人旅が多いのだ?



オタクはさておき、いくつかのトンネルをくぐり
下を見ると足がすくんでしまいそうなほど高い橋を渡り
いよいよアプト式機関車の登場だ。
鉄分を摂取する旅ー③最終回
この線路の真ん中にあるギザギザ(ラックレール)とアプト式機関車についている
歯車(ラックホイールピニオン)がかみ合って車輌を登り降りさせるのだ。

鉄分を摂取する旅ー③最終回
ちなみに車輌の下はこういう感じ。

アプト式機関車と車輌の連結を
見届け、いよいよ出発だ。

鉄分を摂取する旅ー③最終回
アプト式鉄道を満喫できるのは一区間だけなのだが
90バーミルという日本一の勾配を登る場所がある。
90バーミルってどれくらいかと言うと、
1000分の90の勾配である。
ようするに1000mの直線距離で90mを登り降りする坂。

数字だとわかりづらい、という人のために、
鉄分を摂取する旅ー③最終回
この写真を見れば、日本一の勾配というのもうなずける。

アプト式機関車を連結させられた車輌は
ガタンガタンと今までとは違う音を出し、
ラックレールと歯車をしっかりとかみ合わせながら
どんどん力強く登っていく。
日本一の急勾配を登っているという気は
ほとんどしなかったが、アプト式機関車の
威力を感じさせられる坂であった。

初のアプト式機関車を味わい尽くしたあと
私を乗せた車輌は大井川沿いを通りながら山奥へ。
鉄分を摂取する旅ー③最終回
車窓から見える絶景を味わっているとダム湖に
朽ち果てた線路とトンネルを発見。
ダムの水量が多いときは拝むことが
できないこの線路も顔を出してくれた。

日本もまだ捨てたもんじゃないな、と
思いながら車窓から見える自然を前に
思うのであった。

ちなみに「美女づくりの湯」は
浸かったとたん肌がすべすべになる
魔法の湯であった。

しかし私が美女になるには数世紀
湯に浸からなければ無理であろうな。


おわり


過去の記事
・鉄分を摂取する旅ー①
 http://kudaranai.ti-da.net/e3871078.html
・鉄分を摂取する旅ー②
 http://kudaranai.ti-da.net/e3979374.html




Posted by アキナ。 at 22:06│Comments(0)
 
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